人間交差点

たのしいです僕の人生は

伝説は語り継がれる。

あれはたしか寒い寒いド田舎で行われたトイレがものすごい汚い三田のグラウンドでの出来事でした。

 

先発なのか代打なのか覚えていませんが、あれは序盤のイニングやった気がするなあ。

 

無死一塁の場面、初球のサインは送りバント。そこまではわかってた。この場面はバントしか有り得ないと。しかし相手は左のストレートが、はや〜〜い投手。僕は高めのボール球を手だけでバントしたらバックネットにカチ当たって『カッシャーーーン』って音が鳴った。スクイズじゃないかと思うくらいのボール球に手を出した。例えるなら、親友の彼女に猛アタックするようなものだ。これでカウントはワンストライク。ぼくの精神的なカウントはツーナッシング。打席に入る前からわりとツーナッシングな気持ちだった。監督の怒った顔が怖くて怖くて仕方がない。頭が真っ白。

 

そして2球目のサインはヒットエンドラン。テンパったぼくの頭は既に北の大地に広がる雪景色のように真っ白。案の定、外の速い直球、しかもストライクの球をエンドランのサインにも関わらず見逃してしまう失態。これでカウントは双方の意味でツーナッシング。事実上、追い込まれた。この時点でこの打席の勝負はついていたのかもしれない。ベンチに帰りたくなかった。せめてフェアゾーンに打球を放って一塁に走り、そのまま一塁の線上を真っ直ぐ真っ直ぐ遠く離れた場所に走り去りたいと思った。

 

 

しかし、そうは言ってられない。来たるべき3球目が訪れた。1球目、2球目と監督の期待を遥かに超えるミスをした僕に呆れ狂った監督はすごい形相で僕の顔を見た。手も何も動かしていない。いわゆるノーサインだ。本来、ノーサインとは頼りに頼られ、打線の軸となる打者がここぞの場面で出される信頼のサイン。ここはお前に任せたぞの証。しかしこのとき僕に出されたノーサインは『お前はもう死んでいる。』のサインだった。

 

僕はその3球目、低めに消えるボールからボールになるワンバウンドのスライダーを空振った。地上にボールを転がすことさえ出来ぬままベンチの監督の元へと全力で走った。

 

『バッチーーーーーーーーン!!!!』

 

 

これが何の音か、読者の皆さんも既にお気づきでしょう。

 

寒さで感覚を失っていたから、僕の頰に痛みは無かった。

 

 

僕はベンチから消え、いや正しく言えば消されたのだ、そのまま汚いトイレに直行して大泣きしながらうんこをした。

 

カギを開けたままにしていたらしく、相手チームの誰かのお母さんに泣きながらうんこをしている姿を見られた。